大滝村セミナー

概況

 9月9~10日、大滝村セミナーは好天に恵まれ、三峰神社や不動の滝の見学、そして夜のスターウォッチングと翌日の杉の間伐作業も全て予定通り行うことができました。

 セミナーは今年5月の「荒川流域水環境シンポジウム」を含めて今回で6回目でしたが、天気が心配された時も持ち直して、いずれの場合も好天でした。今回、三峰神社に行き、副宮司の千島幸明さんから詳しい説明を受けましたが、「三峰」は「水峰」に通じて水をつかさどっていると聞き、きっと私たちの行動に三峰神社の加護があったのではと話していました。

 大滝村を象徴する「不動の滝」の景観は言語に尽くしがたいものがあり、参加者は一様に感激の様子でした。

 また、よるの交流会での、広瀬利之さんの昔の狩猟にまつわる話と千島兼一さんも加わっての交流会、は夜遅くまで続きました。

 帰路の途中に、寄居町のトンボ公園を見学、山間の谷津田などの休耕田を放置すると、そこがゴミ処分場などにされる恐れもあり、トンボ公園や水田として利用することで、中流域の自然を守っているという新井裕さんの説明を聞き、隣接のトンボ記念館を見学して帰りました。


参加者の感想

 いつも見ている荒川の上流域の姿を見てみたいとの思いから参加させていただきました。天候も良く2日間をすごせて良かったです。三峰神社、不動の滝、間伐作業は個人で行ったのでは体験できないもので、また、そこで働く方々の生の声を聞くことができ、参考になりました。山林保守の大変さは想像はしていましたが、樹齢30年以上の木を伐採する作業で実感しました。

 セミナーに参加するのが楽しみで、待ちきれず、荒川の上流から河口までの写真を図書館で借りて見てきました。しかし、写真よりも、見て、触れて、飲んでこそ面白いですね。さらに考えさせられたことは、上流であれだけきれいなのに、足立区に来るころには、ゴミを沢山浮かべて東京湾に注ぐということです。

 まずは目の前の荒川から、微力ながら、きれいにするお手伝いができたらいいなと思います。(小浪 千鶴子)


間伐作業体験記

 荒川の源流はこの目で見るなり、直に触れるなりしておく必要があろう、とわかっていながらも、正直なところなかなか行く機会がありませんでした。9月11日からは台風14号に刺激された前線の影響で東海地方を中心に記録的大雨となり、災禍をもたらしましたが、その影響を受ける前の土曜・日曜に出かけられたのは、本当に幸運、というか何かの思し召しだったようにさえ思います。埼玉県にありながら、群馬・長野・山梨・東京に囲まれた県境の、そして川の道・山の道が行き交う村、大滝村をようやく訪ねることができました。本来なら、荒川の源流や滝、当地の生態系や動植物、そして多彩な専門家の方々のお話について書いた方が大滝村セミナーレポートとしてふさわしいかと思いますが、今回初めて参加し、いろいろ印象を受けた中でも特に重みのある経験だったので、2日目午前中に作業体験した間伐について記すことにします。

 埼玉県立 大滝グリーンスクールの裏手の山林がその間伐体験のフィールドになっています。楽な作業のように聞いていたので、安直にも半ズボンで臨んだら、とんでもない話で、結構急峻な斜面、かつ枝葉の茂みがところどころ深くなっているような林地だったので、足場が安定せず、下りるのにのっけからひと苦労です。どんな山林でも甘く見てはいけないですね。下りきってようやく一息つき、この日は朝から好天だったので、木漏れ日が差し込む感じが実に心地よかったのを覚えています。ふと見上げるとどれもそれなりの高さの杉木立。見渡す範囲では、さていったいどれが間伐材で、どれを切り倒すのか、皆目見当がつきませんでしたが、いやはやそのそれなりの高さの杉(直径20cm、樹齢40~50年!)が間伐対象、というから驚きです。恥ずかしながら、この時まで、さほど年数の経っていない低木を間引きする=間伐 と大きな勘違いしていたので思わず絶句、です。ヘルメットにナタ、そしてノコギリが各自にあてがわれたので、うすうす感じてはいましたが、ここからは重労働の極みです。初心者なので正確性に欠ける部分があると思いますが、この時ご指導いただいた手順を要約して書き出してみます。

1.残す木と伐採する木を選別する。

 例えばちょっと幹が傾き気味なものは伐り、隣り合う木で比較して、より枝振りがいい方を残すといった感じで、間伐対象を決める。

2.間伐する木の相応の高さにロープをかける。もう一方のロープの端は、上方でつなぎ止める。

 予め長めのロープを用意し、大きめの輪をかけて幹にかける。長い枝や尺などでその輪を人の背丈よりもずっと高い位置に持っていったら輪を縛る。この時の輪の作り方・結び目の作り方は説明しにくい(というか呑み込めなかった)ので省くが、ともかくロープをくくっておく。一方のロープの端は斜面の上の方でキープしておき、間伐する木が倒れそうになるまで、ひとまず手頃な木の幹に結わえておく。

3.「受け口」

 倒れる方向に対し、地面から高さ20cm程のところに、まずはノコギリで3cmばかり水平に切り込んでいく(_で示す)。その切り込んだところの線を下辺にして45°角(/←この角度)で、今度はナタで削り込んでいく。_の3cmの切り込みに/が加わって、受け口/になる訳ですが、ナタを扱い馴れていない私はえらい苦労して/の角度が保てるよう作業を続けました。目標とするところにうまく入っていかないのです。ナタで削り出すと木片が生々しく、痛々しく、どうも心情的な引け目を感じて作業が捗らなかったのかも知れません。

4.「追い口」

 受け口ができたら、今度は反対側(倒す力をかける方向)に切り込みを入れる。この時、受け口よりも15~20cm程高い位置から切り込みを入れるのがポイント。受け口と追い口は段違いになる。すでに伐採した後の切り株を見ると、確かに階段状になっているので合点がいった。

 ノコギリでギコギコやる訳だが、なかなかうまく進まない。一定速度でテンポよくやれればいいのだが、それは熟達した職人技が必要な領域だろう。しかし職人とてうまく進まない時がある。その状態を「渋い」と称するが、渋い時は、先に渡したロープの出番で、倒す方向に沿って上からロープを引くと、追い口にかかる木の重圧が軽くなって、円滑にノコギリが進むようになる。

5.ロープで誘導しながら引き倒す。

 追い口が順調に進むと、木自体の重さで傾き始める。その頃合いを見計らって、すぐさま上方でとめてあったロープの一端を何人かで支え、人為的に倒れる方向を誘導するのに備える。一度傾き出すとあとは加速度的に倒れてしまうので、予めロープをうまく手繰って、都合のよい位置に引き倒すようにしないといけない。

6.枝を払いながら、2m間隔で切り分ける。

 倒れた根元の部分から、2m間隔になるよう尺棒で計りながら、ノコギリで印しを付けて切り分けていく。印しは他の人が見てもわかるように、実際に切る部分を中央線にして、その両脇に同じように線を付け、|||のようにする。一本線だけだと、何かのキズと見間違えることもあるから、3本線はちょっとした知恵ですね。

 根元の方はもともと枝がないから、単に切っていくだけだが、上の方はまだまだ枝が残っているので、枝を付け根からナタで刈り落としつつ、ノコギリで切断することになる。さて、この切断作業もノコギリがちゃんとまっすぐにいかなかったり、倒れた後だというのに、何となく渋かったりで、思うように進まない。仰向けの部分を切り進んだら、今度は反対側(うつ伏せの部分)から切っていって、途中で合流する、という方法で切っていって、やっとこさです。

7.担ぎ出す。

 切断作業ですでにお疲れ状態の身に追い討ちをかけるような搬出作業が待っていました。根元の方は木の形状上、やや太くなっているせいもあって、とにかく重い。3人がかりで何とか運び出したが、そもそも丸太には取っ手なんてないから、運びにくいことこの上ないのです。抱きかかえるようにして、それなりの勾配の斜面を這い上がっていくのだから途方もない作業である(おまけに半ズボンだし、スニーカーも滑るし...)。


 私の班は、若者?!中心のグループだったにも関わらず、わりと斜面の下方の木を選んで、切って、運び出したものだから、2本伐採したところで皆ヘトヘトでした。

 切り出した丸太の樹皮は面白いように剥がせます。ちょうど栗の渋皮がうまく剥けた時や、ゆで卵の殻が薄膜と一緒にきれいに剥けた時と同じような感覚です。この時期(秋の彼岸のあたりまで)は剥がしやすいのだそうです。樹皮を剥ぐと、実に艶やかで美しい。樹液がしっとりと覆っていて、光沢があります。樹皮の方にも樹液がついていて、杉の匂いがほのかに香る。樹液を舐めたら、何となく甘いような渋いような...(五感を使って木を感じるっていうのはこういうことを言うんですかね?) 最後に、間伐体験記念として手頃な厚さで丸太を自分で切って、持ち帰らせてもらいました。これまた初めて扱うチェンソーで四苦八苦しながらやったので、ノコギリで切るのと違って断面が粗削り。年輪は日が当たっていた部分の間隔が広く、日陰の方ほど密になっていて、理科の教科書通りでした。年輪の数を数えると確かに40以上はある。何とも趣深く歴史深い間伐材です。

 東京近県にある山林でこの状態、というかここは体験林なので手入れが行き届いている方だと思いますが、同じ大滝村でも手が回らない山林は数多あります。日本全体、特に過疎地の山林に目を向ければ、国有林・民有林問わず、手付かずのまま放置されているケースが大多数でしょう。間伐を進め、山林を維持するには、間伐材市場を軌道に乗せることも大事だが、その山林の所有者が自覚を以って手塩にかける努力が欠かせない、とこれはセミナーに合流してくれた地元村会議員 山中進さんの言葉です。下草を刈り、適度に枝打ちし、間伐を着実に行い、間伐材の有効利用を確保し、本当に値打ちのある木を育て・残す。それがひいては森全体を守り、その山林に源を発する川を育み、土や水や空気を涵養することになるのだと思います。今回の体験作業で少しは貢献できたならいいのですが。(報告:冨田 行一)